街にある小さな教会。
小さいと言っても普通に結婚式が行われる程度には大きいその場所で、その日も結婚式が行われていた。
そしてパイプオルガンの音が微かに聞こえる裏の空き地に、幼稚園の制服を来た子供が二人いた。
シロツメクサの花畑で何やら作っている。
「違うよ、そこをお花に巻き付けるの！」
「こぉ？」
「違うって。かして！」
熱心なのは男の子。不器用な女の子の為に何やら苦戦している。
「よし、出来たぁ」
そうして揃えて出した二人の小さな指は、花の指輪で飾り付けられていた。
手作りの、婚約指輪。
大人に憧れている時期の子供遊びだ。
「おっきくなったら楓ちゃんは僕のお嫁さんだね」
「猛くんは楓のお婿さん？」
「そうだよ！……いや？」
「ううん、すっごくいい！」
そういって、笑い合った幼い日々。

20年たった今、私の薬指には婚約指輪（ホンモノ）がはまっている。
「楓！」
呼ぶ声はとっくに声変わりして、あの日の名残はないけれど。
「準備できた？」
頷く私に笑いかける姿は、ちょっとカッコ良くなった。
「ドレス、良く似合うよ」
前言撤回、凄くカッコ良くなった。


喧嘩して、絶交もして、それでも切れなかったあの日の約束。
この先もきっと喧嘩して絶交……はしないけど。笑いあって行くんだ。

これから私は、幸せへの扉を開きます。



†††
久々にこんなに明るい世界を書いたかも……。
お題じゃないけど思いついたので載せときます＾＾；